http://watchan.net/utubyou/ 職場とうつ病、仕事による過労死など
犬のワトソン > うつ病講座 > 安全配慮義務・電通事件
 
現在、従業員の安全を配慮しなければ、会社が責任を負うことが当たり前になってきた安全配慮義務ですが、成り立ちも含めて、安全配慮義務は、法律的にも非常に興味深いものです。1975年(昭和50年)2月25日、最高裁が陸上自衛隊八戸駐屯地車輌災害事件の判例を出し、「安全配慮義務」と言う法理が最高裁判例で突然に生まれたようです。

この最高裁判決は民法は公法ではなく、私法です。そして、信義則は私法、公法共通の原理・大原則であることを認めたと言うことです。(ワト注:公法=行政事件訴訟法、私法=民事訴訟法、現在の通説は、公法私法二分論を否定する)

すなわち、契約関係があるかないかではなくて、ある法律関係にもと基づいて特別な社会的接触関係に入った当事者間には、信義則に基づいて「安全配慮義務」が認められると言うものです。

「安全配慮義務」は、法的な義務であり、労働者の生命及び健康等を危険から保護するよう「配慮する法律的な義務がある」と言うところまで認めているのです。努力義務ではありません。だから、これに違反すると事業者の労働者に対する債務不履行になります。

このように、債務不履行責任にあたり、時効の成立が10年であり、損害賠償請求の時効の3年より長くなります。治療中に時効が成立して泣きを見ることもなくなります。

ところが、1975年(昭和50年)2月25日の判例では、具体的な「安全配慮義務」の内容は明示されていませんので、その後の判例で徐々に明確になっていきます。
 
 
1984年(昭和59年)4月10日の川義強盗殺人事件の最高裁判例で、「危険が予見可能である限りは、事業主は具体的な結果を回避する処置を講じなければいけないと言う義務」を明確にしました。(注釈:倉庫番をしていれば、強盗が来るかもしれず、危害を受けるかもしれない。そこまでは、予見可能である。しかし、殺されるかどうかまでの予見は不要である。)

これ以降、この考え方に基づいた判例が色々出てきます。そして、2000年(平成12年)3月24日電通事件の最高裁判例が確定します。事業主は、うつ病にかかるような長時間労働につけてはならない義務があり、うつ病にかかった労働者については、単に早く帰宅して夜はきちんと睡眠し、翌日仕事をしなさい、と指導しただけでは足らず、仕事量を軽減する等の具体的な措置を構ずべき安全配慮義務があるとした判決です。全文は「最高裁判所判例 集判決全文表示 平成10(オ)217、218 損害賠償請求事件 (電通事件) 2000年(平成12年)3月24日 」です。

この事件で電通側は、うつ病になって自殺すると言う予見の可能性はなかった。本来うつ病に罹るようなら身近にいる家族が休ませるべきだし、病気にかかっていることは家族が一番良く分かっていることだから、病院に入れるべきだ。だから、事業主には責任はないと言う弁論をやって新聞にも載ったそうです。

この項は、「安全配慮義務」の法理とその活用 弁護士 岡村親親宜 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生闘争の手引きを参考にして記載しました。(この書籍は、現在でも購入可能です。出版物の紹介をクリックしてください。)

あくまで、私見ではあるが、企業が労働者の健康状態につき配慮すべき義務が生じる程度に予見可能性が出てくる場合としては、
1)一般健康診断の結果、有所見であることが判明した労働者が、その後医師による診断を受けて疾病に罹患していることの告知を受け、その旨を会社に対して報告した場合
2)労働者本人より明確に、基礎疾病または素因があるので就労面における配慮をしてほしい旨の意思表示があった場合
3)その労働者の健康状態の悪化が外見からしても一見して明らかであり、しかもその症状について医学的にも原因が判明している場合
この項は、労働法実務ハンドブック(第2版)中央経済社 455ページから引用しました。

次に、このような予見できる状態になったときに、事業主が勝手に労働者の不利益につながる配置転換ができるかについてです。

労働者が基礎疾病を罹患し、または素因があることが、使用者に判明した場合に、使用者である企業が就労上とるべき措置が結果回避可能性の問題である。労働安全法66条の3第1項には「事業者は、前条の規定による医師または歯科医師」の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の事情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、・・・その他の適切な措置を講じなければならない。」と定められており、医師による指示があれば、使用者である企業は、配置転換・労働時間の短縮・休業等の措置を講じなくてはならないものと思われる。このような場合、何故に医師による指示が必要かと言えば、私傷病である以上、素人による判断のみで就労上の措置をとることは、反面、労働者に対する不利益な措置をとなる可能性があり、正当性を根拠づけることはできず、ひては労働者に対する就労上の命令を発することができなくなるからである。そのような就労上の措置を使用者に義務づける以上は、医師の指示と言う医学的に見ても相当な根拠が必要不可欠ということであろう。その意味では、主として産業医の役割がクローズアップしてくることが予想される。

この項は、労働法実務ハンドブック(第2版)中央経済社 455〜466ページから引用しました。

このあたりを、労働者側も企業側も、間違いなく把握しておく必要があります。困難なプロジェクトで、うつ病経験者が超過勤務連続のうえ、再発後、プロジェクトが完了したかを会社側に確認された後、産業医の面談もなく、うつ病になったため君はいらないと言うことを言われた人を知っています。使うだけ使って、ポイです。上記に照らしてみると、違法行為ですね。
1)再発が予見できるのに一切の配慮がない。
2)仮に、産業医の意見があったとしても、産業医は中立の立場のため両者の言い分を聞く立場なため、このような意見は無効の可能性が大きくなります。。

会社原因、会社原因にかかわらず、上記のことを充分理解しておきましょう。
 
 

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